電子書籍の中古販売が始まった!?NFT技術を利用し売買が可能に?

紙の書籍では新品で買った漫画などを売却することができます。

また書籍を安く買いたい場合などは、中古本などを買って定価よりも安く購入することも可能です。

なので電子書籍でもこのような仕組みはあるのでは?と誰でも思うでしょう。

しかし、2024/05月現在では、まだまだ上記のような仕組みはメジャーになっていません。

それでも、技術の進歩と共に電子書籍界隈でも、NFT技術を利用し中古で買ったり売ったりできるサービスが登場しつつあります。

この記事では電子書籍サービスを取り巻く現状と、なぜこれまで中古売買が実現しなかったのか。

そして中古売買の未来について解説します。

電子書籍の中古販売が実現しなかった理由

電子書籍の中古売買はこれまでほとんど実現しませんでした。

ではなぜ実現しなかったのかいくつか理由がありますので、考察も含めてご紹介します。

電子書籍は読む権利だけ保持する

実はほとんどの電子書籍サービスでは、私たちは書籍を読むだけの「アクセス権」を購入しており、所有権を受け取っていないからです。

紙の書籍を購入する場合、お金を払って本の実物を受け取りますので、所有権は買った本人のものです。

つまり紙書籍では本を読める権利ではなく、所有権(本を自分のものにする権利)そのものを買っています。

しかし、実物をやりとりしない電子書籍の場合はそうではありません。

お金を払って電子書籍サービスから「読む権利」だけをもらっている形で、書籍のデータを好きにする権利までは受け取っていないのです。

では、なぜ読む権利だけなのか?

その理由としてデジタルデータは容易に不正コピーできてしまうから、との理由により所有権が与えられないと言われています。

つまり、中古で売る以前に厳密には私たちは電子書籍そのものを持っていません。

なので電子書籍を購入しても、売れないので電子書籍の中古市場というのがそもそも存在しません。

劣化が無いのも理由の一つ

電子書籍は物理的に劣化をしないのも中古で売り買いができない理由の一つでしょう。

紙の書籍の場合では、日光で焼けて変色したり、濡れて破れてしまったり、小さな虫が湧いたりと時間と共にさまざまな経年劣化が起こります。

そのため中古で購入する際には、自然と「新品よりも劣化した状態」で本がやり取りされます。

しかし、デジタルデータである電子書籍にはこのような劣化は一切ありません。

中古でやり取りされるときにも新品とまったく状態が変わりません。

実質的に「安いだけで新品と完全に同様の状態」となってしまいます。

これでは、新品で購入しようとする方が激減してしまう上、中古でのみ活発にやり取りされて価格がひたすらに下がり続けることにもつながりかねません。

サービス終了による権利の失効

電子書籍は購入したサービスが終了すればアクセスする権利も失われ、読めなくなる可能性もあります。

例えば読む権利を違う方へ販売してしまうと、突然読めなくなる可能性もあるでしょう。

実際、過去複数の電子書籍ストアが閉鎖され問題となったケースがあります。

但し、過去に閉鎖された電子書籍ストアの多くが何らかの形で保証しているので、全てがパアになるということはほぼないと思ってもいいかもしれません。

ですが、サービス終了というのは電子書籍のリスクであり、読む権利が失われるのでこの点もネックとなってると考えられます。

電子書籍の出版取次の問題

現在は少なくなってきていますが、基本的に紙の書籍は出版取次という問屋のような業者を通すのが一般的です。

そして出版取次を通して書店などに書籍が流れる仕組みとなっていますが、この仕組みが電子書籍にも存在します。

出版取次は書籍のデータを主に管理しており、電子書籍のデータをストアに渡すだけではありません。

売り上げの管理など細かい部分までサポートしており、電子書籍の扱いについてストアと、この取次の間で何かしらの契約もあると考えられます。

電子書籍の中古販売が開始している

(出典:メディアドゥ、世界初の「NFT電子書籍」付き新書を早川書房新レーベル「ハヤカワ新書」創刊ラインナップ5作品で提供 | 株式会社メディアドゥ (mediado.jp)

早川書房と電子書籍取次のメディアドゥから発売された「NFT電子書籍」という商品が販売されました。

NFT電子書籍は、ブロックチェーン技術を利用して一意のデジタルアセットとして発行される電子書籍です。

NFTは、一意で交換不可能なトークンであり、それぞれのNFTが異なる価値と情報を持っています。

これにより、電子書籍も物理的な書籍と同様に「所有」することが可能になります。

よって、このNFT電子書籍は売買することが可能となっているのです。

NFT電子書籍の最大の特徴は、所有権の証明がブロックチェーン上に記録されることです。

これにより、著作権の管理や取引の透明性が向上し、中古市場での取引も容易になります。

例えば、あるNFT電子書籍がブロックチェーン上で取引される際、その取引記録はブロックチェーンに永久に記録され、誰でもその記録を確認することができます。

これは、従来の電子書籍がDRM(デジタル著作権管理)によってコピー防止され、中古市場が存在しない問題を解決するものです。

関連ページ:電子書籍のスクショやコピーは犯罪かどうか調べてみた!

所有者が自由に取引でき、それに伴う著作権も移転するため、中古市場が形成される可能性があります。

NFT電子書籍のもう一つの特徴は、著者と読者が直接取引できる点です。

従来の出版業界では、出版社や販売プラットフォームが間に入り、著者の収益が減少することがありました。

しかし、NFT電子書籍では、ブロックチェーンを介して著者と読者が直接取引を行うため、著者の収益が向上する可能性があります。

まだ発展途上なので過度の期待はできない

NFT電子書籍の登場により、電子書籍の中古市場の存在が現実的なものとなりつつあります。

ブロックチェーン上での取引記録により、所有権の移転が明確になるため、中古の電子書籍を安心して購入、販売することが可能です。

これにより、読者は手頃な価格で電子書籍を購入でき、著者は新たな収益源を得ることができます。

しかし、NFT電子書籍の中古市場はまだ発展途上であり、法的な枠組みや技術基盤の整備が必要です。

2024/05月現在では有名な出版社においてNFT電子書籍は販売されておらず、今後どのくらいの期間で発展するかもまだ不明です。

これからの技術の進展とともに、電子書籍の中古市場がどのように形成され、発展していくのかが注目されます。

下限価格の設定が可能

ブロックチェーン技術の登場により、電子書籍の中古売買が現実的に近づく中で「データが劣化しないこと」への対抗策として考えられているのが下限価格の設定です。

電子書籍の中古売買では中古にのみ人が集まり、価格が下がり続ける可能性が懸念されます。

この対抗策として、中古で売れる下限価格を出版社や電子書籍サービスがあらかじめ設定することで、価格の下がり過ぎを抑制しようとしているのですが、結局のところ、新品よりも中古を買う人が増えすぎるのではないか、という懸念は解消されていません。

しかし、一定の価格を維持することで出版社や作者の利益を保護でき、中古売買実現への動きが活発化する効果は見込まれています。

中古販売はないがamazonに貸出機能が存在

日本のアマゾンではありませんが、海外サイトの「amazon.com」には、購入した電子書籍を他人に貸し出すことができる貸し出し機能が存在します。

この機能は、特定の電子書籍を14日間、友人や家族などの他人に貸し出すことができるもので、貸し出し中は貸し手がその本を読むことはできません。

関連ページ:電子書籍の貸し借りや回し読みは違法行為となるのか?

この貸し出し機能は、Kindleという電子書籍リーダーで利用可能です。

ユーザーは、Kindleストアで購入した電子書籍を、特定の期間だけ他人に貸し出すことができます。

貸し出しは、amazon.comのウェブサイト上で管理され、貸し出しを希望する本のページにある「loan this book」というボタンをクリックすることで、貸し出しの手続きを進めることができます。

貸し出しを受けた側は、貸し出し期間中にその電子書籍を読むことができ、期間が終了すると自動的にアクセス権が削除されます。

これにより、物理的な書籍を貸し出すのと同様の感覚で、電子書籍を他人と共有することができます。

この機能は、電子書籍の利便性をさらに拡大するもので、読みたい本をすぐに他人から借りて読むことができるため、新たな読書のスタイルを提供しています。

このように、amazon.comの電子書籍貸し出し機能は、電子書籍の持つ便利さと共有の楽しさを組み合わせた、新しい読書体験を提供しています。

これからも、技術の進化とともに、さらなる機能拡充やサービスの向上が期待されます。

電子書籍の中古販売まとめ

電子書籍の中古市場は、これまで活発ではありませんでした。

しかし、ブロックチェーン技術の進展が、その構造を変えつつあります。

特にNFT(ノン・フングィブル・トークン)技術は、電子書籍の所有権を明確に証明し、ユーザー間での売買を可能にするポテンシャルを秘めています。

この技術の登場により、読者は自身が購入した電子書籍を他のユーザーに安全に売却したり、購入したりすることが可能になる見込みです。

これにより、電子書籍の流通市場は、物理書籍に近い形での取引が期待され、多様な読書体験が広がるでしょう。

また、NFT技術の応用は電子書籍にとどまらず、音楽やゲーム、動画などのデジタルコンテンツにも展開される可能性があります。

コンテンツの所有と共有の概念が根本から変わり、新たなエンターテイメントの形が生まれるかもしれません。